在宅ワークで給料・残業代はどうなる?知っておくべき労働法を解説!

コロナウィルスの影響で、在宅ワークが少しずつですが浸透してきています。在宅ワークになった場合、これまでの給料が下がるなどの影響はあるのでしょうか? この記事では、知っておくべき労働法と在宅ワークについて解説します。
目次
1在宅ワークとは
2給与はどうなる?
3残業や深夜手当は出るの?
4在宅勤務の注意点
5在宅ワークで不当な扱いを受けたら、法務部や外部機関に相談を
在宅ワークとは
緊急事態宣言などの影響で急速に拡大しているのが、家で働くスタイル。
ここでは総称して、在宅ワークと呼びます。
どんな働き方があり、どの働き方に労働法が適用されるのかについて見ていきましょう。
重要なのは、呼び名ではなく雇用形態
最近では在宅ワークに関して、在宅勤務やノマドワーク、テレワークなど、さまざまな呼称があります。
まずは、これらの働き方がどのようなものか、それぞれの意味や違いを理解しておきましょう。
最初に、SOHO、ノマドワーク、と呼ばれる働き方です。どちらも個人事業主や個人会社を運営しているケースが多く、業務形態は個人事業主が多いでしょう。
SOHOは家をオフィスにするという意味であり、ノマドワークはオフィスがなくカフェなどで転々と仕事をしている状態を指します。
次に、フリーランスや在宅ワークです。
フリーランスはその名の通り、ご自身で自由に仕事を請け負っているケースです。そのため、勤務形態は個人事業主となる方が多いと言えます。
在宅ワークは人によって雇用形態が異なるので注意です。雇用主がいて労働契約に基づき働く社員であるものの、家で仕事をすることが許されている方もいれば、個人で事業を請け負う個人事業主の方もいるからです。
最後に、テレワークや在宅勤務という働き方です。
テレワークや在宅勤務の場合は、個人事業主ではなく、いずれかの会社に勤めているものの、家での勤務が認められているケースといえます。
このように最近ではさまざまな働き方がありますが、働き方の呼び名によって契約内容を判断することは難しいこともあります。
注目すべきは、雇用形態だということを最初に理解しておきましょう。
労働法は、業務委託契約には適当されない
労働法は労働者の権利を守る法律です。
そのため、この法律が適用されるのかは、あなたが法的にみて労働者といえるのかが問題となってきます。
「え、働いているからみんな労働者でしょ?」と言われそうですが、狭義には労働者ではない可能性もあるのです。
具体的には、あなたが業務に関して締結している契約によってあなたが労働者かどうかが決まります。
雇用契約を締結している場合には「労働者」であり、そうではない場合、つまり業務委託契約を締結している場合は労働者には含まれません。
家で仕事をする場合でも、労働契約を締結している場合は労働法が適用されるのです。
どのような契約形態を取っているかをいちいち確認していない方も多いので、今のうちに確認しておきましょう。「労働者だと思っていたらそうではなかった」なんてこともありえます。
そして、業務委託契約の場合は、労働法は適用されません。副業以外で確定申告などを自分で行っている方は、ほぼ業務委託契約と考えていいでしょう。これは重要なので覚えておいてください。
在宅勤務・在宅ワークになったら給与はどうなる?
最近の社会事情で在宅勤務になった方は、給与が減ってしまうかも!と不安になっている方も多いかもしれません。在宅勤務になり、雇用主の意向で勝手に給与が減らされてしまうことはありうるのでしょうか?
給料を減らされる可能性は…ある!けど、違法の可能性高し
今回のコロナウィルスの影響で、在宅勤務が命じられた方も多いのではないでしょうか。
「在宅勤務になってから給料か減らされた!」なんてことがあればそれは違法の可能性が高いと言えます。
まず、給料に関しては勝手に雇用主側の事情で変更することはできません。
会社に命じられた通りに在宅勤務にしただけであるのに、これを理由に勝手に変更することは不利益変更にあたるため、必ず労働者側の同意が必要となるからです(労働契約法第9条)。
在宅勤務を自ら希望した場合は、交渉次第
ご自身が希望して在宅勤務にしてもらった場合は、給料に関しては会社との交渉で決めることになります。
この場合も一方的に減らされるようなケースは違法の可能性が高いと言えるでしょう。
また、「在宅勤務自体が拒否された!」というケースの場合は、会社が労働者に対する安全配慮義務に違反している可能性が高いと言えます。
就業規則に在宅勤務の規定などがある場合には、それを利用してご自身の希望を伝えた方が良いでしょう。
違法の可能性がある場合は、団体交渉権を行使しよう
労働者には労働組合に加入する権利と労働組合に訴えて団体交渉権を行使する権利があります。
そのため、「給与を勝手に変更された」「在宅勤務を認めてくれない」という事情がある場合は、その旨を労働組合に伝えてみるのも1つの方法です。
これ以外にも、労働条件相談ホットラインに相談する、各地域にある労働基準監督署に相談することも可能です。
違法な状態を放置すると問題が大きくなってしまうので、できるだけ早い段階で誰かに相談することが大切です。
残業代や深夜手当は出るの?
在宅勤務になって「手当が出るのかどうか」が気になるという方もいらっしゃるでしょう。
残業手当や深夜手当がきちんと出るのかを確認しておきましょう。
Q1 家で仕事しても残業代は出るの?
家で仕事をすることになり「いつも以上に作業が増えて残業しなければいけなくなった…」なんてお話もよく聞こえてきます。
しかし、家で仕事をしていると残業を報告するのに引目を感じたり、サボっているといわれないか不安になることがありますよね。
実際のところ、在宅で働いていても残業をした場合には残業代を請求できます。雇用契約を結んでいる限り、労働基準法も適用され残業した場合には雇用主はきちんと支払わなければいけないのです。
在宅ワークを導入している企業の場合は、「みなし労働時間制」を導入していることが多いですが、この場合でも残業代は支払われます。
労働基準法に規定されている通り、1日8時間以上週に40時間を超える場合は、割増賃金を請求することができると覚えておいてください。
みなし労働時間制とは、労働時間の把握が難しい業務内容(営業など)の場合に、労働基準法の定める労働時間分は働いたとみなす制度のこと。みなし労働時間制が導入されているケースでも、所定の法定労働時間を超える分について残業代は支給されるよ!
Q2 深夜手当や休日手当は出るの?
では、深夜手当は出るのでしょうか?
お子さんがいる家庭の場合、なかなかお昼にまとまって時間を取れないこともありますよね。この場合、深夜作業や休日作業が増えてしまうことがあります。
これについても、深夜手当や休業手当がきちんと出る(労働基準法37条4項)ため、この分の割り増し賃金はきちんと請求できます。
Q3雇用契約から業務委託契約に変わったのだけど、これって問題になる?
雇用契約方業務委託契約への変更は、雇用主と労働者の合意がなければできないことです。
一方的に契約変更を迫られた場合は、違法の可能性が高いので労働組合や労働基準監督局等に相談してください。
また業務委託契約の場合は、基本的に残業代や休日手当、深夜作業手当ては請求できません。雇用関係になく、労働基準法の適用がないためです。
もっとも、実質的に見て「どう見ても雇用契約でしょ?」という場合は、労働基準法が適用されるケースもあります。
たとえば、雇用主側に業務遂行上の指揮監督権があり、時間で拘束される場合、報酬の決め方などもアルバイトなどと同様に時給制であるというケースでは、残業代の請求も認められる可能性があります。
このようなケースで残業代を請求したい場合は、外部機関に相談するか弁護士に相談するのが適切です。
在宅勤務の注意点
在宅勤務をするにあたり、残業代請求などで手間取らないためにも、いくつか労働者側で気をつけておくべきポイントがあります。
具体的には、以下の通りです。
・時間外で働く場合は必ず上司に報告する
・働き方で問題が出てきたら、その都度話し合ってコミュニケーションを密に取る
・時間外勤務の証拠を残しておく
・きちんと休憩を取ること
上司への報告はこまめに
まず、時間外で働く場合はきちんと上司の許可を取りましょう。
「勝手に残業した場合は残業代を支払えない」と言われてしまう可能性があります。先に許可を取るのを忘れた場合、事後でもできるだけ早めに報告してください。
働き方で問題が出てきたら、その都度話し合ってコミュニケーションを密に
また在宅ワークの場合は、職場で仕事をするのと違ってコミュニケーションが疎かになりがちです。
仕事上何か不都合や問題があれば、すぐに報告することが大切。
上司等の具体的な指示に従い行動していることが明らかであれば、残業代請求の証拠にもなりやすいと言えます。
時間外勤務の証拠を残す
時間外勤務の証拠はきちんと残しましょう。
急な要請で業務時間外の仕事をしなければいけなかった場合、残業代を請求する際の証拠を残しておくと、トラブルを防げます。
具体的には、上司からの指示のメールの記録や電話の通話履歴などを残しておくと、残業代請求の証拠として役立ちます。
きちんと休憩を取ろう
休憩をとることも大切です。
在宅ワークでは、伸び伸び仕事ができると考えたいところですが、日本人は真面目な人が多く「サボっていると言われないか不安」という方が多いそうです。
慣れない仕事環境で会社に気を使うのもわかりますが、誰も見ていないからこそきちんと休憩を取ることも大切です。
このように、気をつけるべきポイントさえ守れば、通常残業代は支払われます。
会社と労働者との間でミスリードが起きないようにするためにも、上記ポイントは守るようにしましょう。
在宅ワークで不当な扱いを受けたら、法務部や外部機関に相談を
いきなり変わった勤務環境に慣れず、みなさん手探りで在宅ワークを頑張っていることと思います。
もし給与等に関して、不当な取り扱いを受けた場合はすぐに誰かに相談してください。
まずは会社の法務部に間違いがないか確かめ、うまく対処してもらえない場合は労働組合や労働基準監督署に相談することをおすすめします。
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